亡く季節


目を開けると、私は白い空間にいた。
何もない、真っ白な世界。

「ここ、どこ…?」

その問いかけに応える声はない。

「キッド、どこに…」

ふ、と手に当たる感触に視線を落とした。
いつの間にか手のひらに握られていたもの。

「時の…たまご?」

どうしてここに、と呟いて気づいた。

これは、時空を渡る事の出来るもの。
これがあれば――彼にまた会える。

「そ、んな…私の為に」

知らず涙が溢れた。
全てを知りながらも、それを許し、チャンスを与えてくれた。

「みんな…キッド…ありがとう…」

その場に座り込んで――目を閉じた。


+++++

バシャアァンッ

突然響いた鈍い水音と、叩き付けられる様な痛み。

−−息が出来ない。

脳がそう認識した瞬間、息苦しさが私を襲った。
状況も何も解らないまま声を出そうと開いた口に、空気ではなく大量の水が入り込む。

目を開けて見れば、遥か遠く上に光の筋がゆらゆらと揺れていて。
私はその光とは逆の、暗い闇に落ちているようだった。

光の方へ向かおうと足掻けば足掻くほど、冷たい水は私を飲み込もうと纏わり付いてくる。

−−苦しい。誰か、助けて!

酸素を求め必死にもがき、伸ばした腕を、誰かが掴んだ様な気がした。
勢い良く引っ張られ、私はそのまま光の方へ――

覚えのある景色。
覚えのある匂い。

「…

懐かしい声。
会いたくてたまらなかった、愛しい人。

「…会いに、来たよ」

笑顔でそう告げれば、フェイトはゆっくり頷いて私を強く抱き締めた。





(物語は巡る)
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