亡く季節
セルジュは、時を喰らうものを倒したのだろうか。
キッドは、捕らわれたサラさんはどうなったのだろうか。
全てが始まったこの場所で、子供達が教えてくれた。
「時喰らいを倒し、サラさんを解放する…」
それが、この物語の目的。
本当の始まりは、気の遠くなるほど遠い、過去の話。
決められていたのかも知れない。
彼がいなくなる事も、全ては。
「それでも、私は…」
彼を愛してしまった。
それこそ逃れる事の出来ない「運命」だった。
憎しみに捕らわれた彼を救いたかった。
でも、私にはもう何もする事が出来ない。
彼はいなくなってしまったのだから。
膝を抱え、海を見つめる。
もう何も考えたくなかった。
「」
いつまでそうしていたのだろうか。
背後から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「セルジュはサラを解放した。オレはこれから、10年前に行ってセルジュを助ける」
懐かしい声。
立ち上がって、抱きつきたい。でも、顔を上げる事が出来ない。
「サラが…セルジュ達が、お前も助けてやってくれって…。だけど、オレはやっぱりヤマネコを許す事は出来ない。」
詰まる言葉が優しかった。
解ってるよ、キッド。
許してもらおうとは思わない。
それは、彼の罪。
裏切った私に、優しい言葉をかける必要なんかないんだよ。
「だけど…大切な人を失う気持ちは、よく解る」
決心した声が私を揺るがす。
「だから、失わなくて済む可能性があるなら、」
オレはお前に、幸せになって欲しい
そう告げたキッドの顔は、驚くほど優しかった。
悲しげに遠ざかる冬